寒天とこしあんで作る、軽やかな水ようかん。やさしい甘さで、冷蔵庫でしっかり冷やし固めてからいただきます。
蒸し暑くて食欲のない日でも、冷蔵庫から出した水ようかんは、ひと切れあっという間に消えてしまいます。スプーンの上でぷるりと揺れ、すっと切れ、舌の上でほどけるように溶けて、小豆のまろやかな風味と水のように澄んだ涼感を残します。
材料は驚くほどシンプル。小豆、寒天、水、そしてひとつまみの塩だけ。一見おとなしい味わいでも、二切れ目にはそのおいしさがしっかり伝わってきます。

水ようかんとは?
水ようかんは文字どおり、水を多く含んだようかんです。和菓子のひとつで、緑茶と一緒にいただくことの多いお菓子です。名前のとおり、長期保存向けの濃厚で甘い練りようかんに比べて、ずっと水分が多いのが特徴。上質な水ようかんは、弾力ではなくすっとした切れ味があり、口の中でさっとほどけ、上から下まで色も均一です。
「ようかん」という言葉の由来は古く、もともとその漢字は、冷ますと固まる中国の羊肉の羹を指していました。それが禅僧によって日本へ伝わり、やがて精進料理の考え方の中で、肉は小豆や小麦粉、でんぷんへと置き換えられていきます。

羊の羹から小豆の寒天菓子へ
中世の寺院では、精進料理によって動物の肉が禁じられていました。そこで料理人たちは、伝来したこの料理を植物性の材料で作り替えます。色合いと深みを出す小豆、形を保つための小麦粉やでんぷん。こうして生まれたのは、もはやスープではなく、蒸して作る甘味でした。
転機となったのは江戸時代です。17世紀に改良された寒天によって、甘く煮た豆の生地を重たい塊ではなく、すっきりとした切り分けやすいゼリー状に固められるようになりました。19世紀初頭には、加賀藩の金子鶴村の日記にも、より軽く、水分が多く、繊細な菓子として水ようかんがすでに登場しています。
けれど、この菓子には季節の逆説があります。百貨店ではお中元向けの7〜8月の涼菓として並ぶ一方、福井や日光では冬の味。冷蔵庫のない時代、これほど水分の多い菓子を守れたのは、冷えた部屋と山の凛とした空気だけでした。呼び名も地域によって異なります。
福井や関西の一部では、「でっちようかん」は特に水分の多い水ようかんを指しますが、滋賀では同じ言葉が、小麦粉と豆で作って蒸し、竹の葉で包んだ菓子を意味します。

水ようかんの主な材料

こしあんは、水ようかんの骨格となる材料で、落ち着いた赤褐色と豆の風味をもたらします。皮を取り除いて裏ごししてあるため、ざらつきのない、なめらかで絹のような口当たりに仕上がります。いっぽう水は、この菓子に名を与える存在。軽やかで涼やかな口当たりを生む反面、とても傷みやすく、作る側にはぐっと難しさが増します。
寒天は、テングサなどの紅藻から作られる凝固剤です。沸騰させることで力を発揮し、30〜40℃で固まるため、しっかりとして歯切れがよく、常温でも安定した食感に仕上がります。
ゼラチンでは同じ食感にはなりません。動物由来で、体温で溶け、あのすっと切れる口当たりではなく弾力が出ます。また、寒天として売られていても、純粋な寒天とは配合の異なる製品では、よりやわらかく、ぷるんとした食感になることがあります。
砂糖は一般的には白砂糖ですが、福井ではより色の濃い黒糖を使うことも多く、糖蜜のようなコクが加わります。ひとつまみの塩が甘さを引き締め、小豆の土っぽい風味を引き立て、後味がぼやけるのを防ぎます。水も大切です。日光の山の水のように、やわらかくミネラル分の少ない水なら、よりやさしい口当たりに固まります。

本格派の見極めポイントと失敗を防ぐコツ
仕上がりは切り口に表れます。なめらかで均一、表面に白っぽい層がなく、底に濃い帯もないこと。二層に分かれていたら「分離」のしるしで、固まる前に豆あんが沈んでしまった状態です。
防ぐコツはひとつ。混ぜながら40℃前後まで冷まし、少しとろみがついてから型に流して、あんが均一に散ったまま固まるようにします。また、この菓子は水分が多いので、冷蔵で保存し、3〜5日以内に食べきってください。

材料
- 450 g 水
- 2 g 粉寒天
- 15 g ブラウンシュガー できれば黒糖がおすすめ
- 250 g こしあん(なめらかな小豆あん)
- 0.5 g 塩
指示
加熱・混合
- 鍋に水、粉寒天、ブラウンシュガーを入れる。450 g 水, 2 g 粉寒天, 15 g ブラウンシュガー

- 完全に溶けるまで加熱する。

- 1分以上、沸騰状態を保つ(しっかり固めるための大切な工程)。

- 塩を加える。0.5 g 塩

- こしあんを漉し、みそを溶くような要領で鍋の中に加えて混ぜる。250 g こしあん(なめらかな小豆あん)

- 鍋の中で約15分混ぜ、とろりとするまで煮る。

冷却・凝固・仕上げ
- 約20分、混ぜながら粗熱を取る(混ぜ続けることで二層に分かれるのを防げる)。
- 長方形の型に流し入れる。

- 完全に固まるまで冷蔵庫で冷やす。
- 切り分け、しっかり冷やした状態でいただく。
