私の日本料理の記事をご覧になった方は、昆布がたびたび登場することにお気づきかもしれません。では、昆布とはそもそも何者で、なぜ日本の食文化においてこれほど欠かせない存在なのでしょうか。本記事では、その疑問に詳しくお答えします。
昆布とは?
昆布(こんぶ)は「コンブ」「ケルプ」とも呼ばれ、中国語では海帯、韓国語ではダシマとして知られるラミナリア属の食用海藻の総称です。日本・韓国・中国など東アジアで古くから食され、フランス・ブルターニュでも栽培されており、現地ではブルトン昆布、“魔女の鞭”、ウアール、柔らかいラミナリア、ロイヤルコンブなどの名で親しまれています。海苔や青のりと同じく、日本で広く食用とされる海藻のひとつです。
昆布は北方の冷たい海の水深5〜8mで育ち、とりわけ日本北部の大島や北海道沿岸に豊富に自生しています。最良の状態に成熟するまでに約2年を要し、収穫期は例年7〜9月。専用の船で海底から引き上げ、根元を残して上部の葉のみを刈り取ることで、再生を促します。
収穫後は岩肌に広げて4〜5時間天日干しし、その後に圧搾して余分な水分を抜きます。完全に乾いたら屋内へ取り込み、用途や等級に合わせて選別したうえで出荷されます。
昆布の種類
代表的な昆布は利尻昆布・真昆布・羅臼昆布・日高昆布の4種です。
利尻昆布は濃い茶褐色で、薄くて非常に硬いのが特徴。縁に軽い波があり、北海道北西部の利尻島にちなんで名付けられました。とった出汁は澄んで香り高く、ほのかな塩味と力強い旨味が楽しめます。
真昆布は、とくに大阪を中心とした関西で人気。帯のように幅が広く厚みがあるのが特徴です。出汁はより澄み、上品な甘みが際立ちます。
羅臼昆布は薄手ながら幅が非常に広く、名前の由来は北海道・羅臼町。出汁はやや黄金色を帯び、コク・香り・甘みが特に豊かです。
日高昆布は黒みがかった緑色。東京をはじめ北日本で人気が高く、ほかの昆布より手頃な価格のため、副菜など幅広い料理に使われます。出汁は利尻昆布よりもやや甘め。
昆布の料理への活かし方
昆布は何世紀にもわたり、とくに日本をはじめとするアジア料理で欠かせない旨味食材として愛用されてきました。20世紀初頭、日本の化学者・池田菊苗が昆布に豊富なグルタミン酸(MSG)を発見し、これがうま味、すなわち“第五の味覚”の解明へとつながります。それ以降、昆布の活用法は世界中に広がっています。ここでは、その代表的な使い方をご紹介しましょう。
出汁をDashi取る:昆布は味噌汁、蕎麦やラーメンのつゆ、豆腐のスープなど、数々の和風汁物を支える基本の出汁材料(三大旨味素材)のひとつです。
野菜のブイヨンを作る:昆布を野菜と一緒に煮込めば、ブイヨンに奥行きのある旨味が加わります。キムチチゲなど、ほかのスープのベースに使うのもおすすめです。
サラダを作る:昆布を1時間ほど水でやわらかく煮て細かく切り、サラダに混ぜ込みます。
魚や野菜を昆布締めにする:刺身や野菜を昆布で挟み、余分な水分を抜きながら旨味を移す“昆布締め”にも欠かせません。
調味料として使う:昆布を粉末や刻み昆布にしたり、煮出してエキスを取ったりすれば、幅広い料理の味付けに役立ちます。詳しくは私のめんつゆやふりかけの記事をご覧ください。
ご飯に風味を付ける:米を炊く際に昆布を一枚加えるだけで、香り高いご飯に。すし飯やおにぎりなどに最適です。
豆を柔らかくする:豆を煮るときに昆布を加えると、短時間でやわらかくなり、消化も良くなります。
昆布の選び方と保存法
国産の乾燥昆布は、日本食材店やアジア系マーケットで手に入ります。大型スーパーでも扱いがあることも。購入時は賞味期限と包装の破損がないかを必ずチェックしましょう。
昆布は熱・直射日光・湿気に弱いので、乾燥した涼しい暗所での保存が鉄則です。良質なものなら、風味を保ちながら1年ほど楽しめます。
昆布の健康効果
昆布はグルタミン酸が豊富なだけでなく、代謝・骨の健康・免疫機能に必須のヨウ素をたっぷり含みます。さらに、ヒトの胃では分解しにくい複雑糖を分解する酵素を持つため、ダイエット中にもおすすめです。
このほかカルシウム、鉄、マグネシウム、カリウム、ビタミンA・C、さらには銅や亜鉛などの微量ミネラルもバランス良く含まれています。