日本の伝統的な製法でじっくり火を入れた、絹のようになめらかで満足感のある卵――日本のストリートフードを代表する一品!
日本は数千にも及ぶ天然温泉でよく知られています。現地では「温泉(Onsen)」と呼ばれます。多くの人がその癒やしとリラックス効果を楽しみますが、実は料理の世界でも大きなインスピレーションの源になっています。
この“方程式”に卵を足すと生まれるのが温泉卵。純粋でシンプルなおいしさです。日本料理の定番レシピをご紹介します。これを知れば、もう従来のポーチドエッグには戻れません。
温泉卵とは?
温泉卵(温泉玉子、温泉たまご)は直訳すると「温泉の卵」、通称「温玉」。具体的には、火山性の温泉に殻付きのままゆっくり浸して火を入れた卵のことです。
牛丼の上にのせる一般的なポーチドエッグとは異なり、独自の加熱法で仕上げます。卵白はなめらかでやわらかく、黄身は半熟。これに、だし・しょうゆ・みりんで作るつゆをかけ、青ねぎや三つ葉を添えていただきます。

一般的なポーチドエッグのように、卵白がやや硬く黄身がクリーミーというのとは異なります。ご心配なく、温泉を探す必要はありません。キッチンの“お湯”で十分です!
温泉卵の火入れ
温泉卵には特有の食感があり、どうすればこの仕上がりになるのか不思議に思うかもしれません。実は、この調理には温度管理の科学があります。黄身と卵白はそれぞれ異なる温度で凝固し、黄身は70°C、卵白は80°Cで固まります。ここがまさに慎重な温度管理が求められるポイントです。
卵白を絹のように、黄身をほどよくやわらかく仕上げるには、65〜68°Cの湯温を30分間、一定に保ちます。別案として、68〜70°Cで20分でもうまくいきます。
ここで温泉との関係が腑に落ちるはず。この方法は、日本の火山性温泉の湯温を模したものなのです。
温泉卵の歴史
ご想像のとおり、温泉卵は日本ならではの料理で、もともと日本の自然資源を生かした調理法です。日本は環太平洋火山帯に位置し、温泉と火山が豊富です。
「温泉」という語は一般に「熱い湯(温泉)」を指します。ですので、温泉を楽しみに行っても、必ずしもその場でポーチドエッグに出合えるわけではありません。温泉文化は何よりも、720年ごろにまでさかのぼる伝統です。
とはいえ、この文化的な営みは台所にも応用されました。温泉卵という名は、その調理法に由来しています。いわば卵の“スパ”です。

特に九州の別府などの温泉地が発祥といわれます。温かく安定した湯温は、卵を湯に預けておき、戻ってきたときにちょうどよく火が入っているという、理想的な環境でした。
また、最初の温泉卵は300年以上前、旅人が誤って温泉に卵を置き忘れ、戻ってきたら火が通っていた、という逸話も伝わっています。
温泉卵の主な材料

卵:小さめでも大きめでも構いません。ただし小さいほど火の通りは早くなります。とくにこのレシピでは卵の品質に気を配ってください。
だし:料理全体の味わいに奥行きを与えます。卵はもともと非常に穏やかな味なので、だしが加わることでより力強く、うま味豊かな風味になります。このレシピでは、顆粒だしを溶いただし汁でOKです。
みりん:やさしい甘みで、だしの甘さを引き立てます。卵料理でよく使われる調味料で、卵焼きやラーメンの味付け卵(味付け玉子)、たまごサンドなどでも活躍します。
薄口醤油:みりん同様、要はバランス。薄口醤油はさらりとして塩分もほどよく、温泉卵を甘すぎず塩辛すぎずに整えてくれます。
かつお節:カツオを乾燥・熟成して薄く削ったもの。力強い塩気と燻香があり、肉と魚の中間のようなうまさを感じさせます。
昆布:海苔や青のりと同じく、日本で重宝される海藻の一種です。だしを構成する要素のひとつで、そのだしは味噌汁や冷たいそばのつゆの土台にもなります。

材料
- 4 卵 室温に戻す
- 1 リットルの水
- 200 ml 水 冷水
薬味
- 青ねぎ 小口切り
指示
- 蓋付きの鍋で水を沸かす。1 リットルの水

- 沸騰したら火から下ろし、冷水を加える。200 ml 水
- 卵を湯に入れて蓋をし、火を止めた状態で17分おく。4 卵

- その間、別の鍋でだし・みりん・薄口しょうゆ・しいたけを合わせ、中火でひと煮立ちさせる。100 ml だし, 1 大さじ みりん, 2 大さじ 薄口しょうゆ, 1 小さじ しいたけ

- 沸いたら1分煮て火を止める。
- かつお節と昆布を加え、2分ほど浸してから、さらしでこす。3 大さじ かつお節, 1 昆布のかけら

- 卵の殻を、崩さないようにそっとむく。
- 各器に卵を2個ずつ入れ、半分ほど浸るまでつゆを注ぐ。

- 仕上げに青ねぎを散らし、さわやかな香りと食感を添える。青ねぎ
Notes
Nutrition
料理の参考資料
本レシピの卵の加熱時間は、Just One Cookbook の記事を参考にしています。丁寧で美しい解説です。
